【罹患率は80%以上】ネコちゃんの変形性関節症

知識・お役立ち 2023.11.10

目次

  1. はじめに
  2. ネコちゃんの変形性関節症とは
  3. ネコちゃんの関節って?
  4. ネコちゃんが関節症になりやすい理由
  5. 変形性関節症には二種類がある
  6. 変形性関節症を引き起こす、その他の病気と好発品種
  7. 変形性関節症が疑われる症状
  8. 変形性関節症の予防方法
  9. できるだけ健康に、ともに歳を重ねていきましょう

1. はじめに

11月ももう中旬。朝晩の冷え込みが少しきつい日も増えてきましたね。

今回は、そんなこの時期、いま一度気を付けたいネコちゃんの変形性関節症についてお伝えさせていただきます。

2. ネコちゃんの変形性関節症とは

ネコちゃんの関節部分は、硬い骨同士が直接擦り合わないように骨と骨の間でクッションの役割になっている「関節軟骨」という箇所があるのですが、この部分がさまざまな原因により破壊され、それに伴って関節を守るように関節自らが肥大化してしまう疾患です。

ネコちゃんの腎臓病に次いで、最も多い病気として知られており、5-10歳は56%、12歳を超えると90%以上の猫ちゃんがこの病気にかかっていると言われています。

3. ネコちゃんの関節って?

関節と言っても私たち人間同様、肘や足首、股関節やあごなど全身の様々な部分に関節はあります。

人間の関節は全部で68個といわれていますが、ネコちゃんについてもほぼ同じ数、60-70は存在するといわれているのですす。そのなかで変形性関節症は特に、肘や股関節、脊椎に現れやすいといわれています

4. ネコちゃんが関節症になりやすい理由

ネコちゃんは行動範囲が上下にも広く、普段から高い場所に飛び昇ったり飛び降りたり、関節や骨をワンちゃん以上に酷使しています。 そのため、日常の生活でも一つ一つの動作で関節にかなりの負担がかかっており、高齢になればなるほどその衰えが顕著になります。

5. 変形性関節症には二種類がある

変形性関節症といっても、その発症には、以下の2種類のタイプがあるといわれています。

ひとつめは、加齢や肥満が原因となり、発症するものです。品種関わらずどの子にも発症リスクがあります。もう一方は、他の病気が引き金となって起こる関節炎です。遺伝的な要素が多く、それゆえまだ2、3歳という若年の猫ちゃんでも発症することが多いものです。代表的なものでは、スコティッシュフォールドの「骨軟骨異形成症」やペルシャの「股関節形成不全」などが挙げられます。

6. 変形性関節症を引き起こす、その他の病気と好発品種

1.膝蓋骨脱臼

膝のお皿が本来あるべきところから横方向にずれてしまうことで、後ろ足の膝関節に力が入らなくなり、歩き方に異常が出る病気です。小型犬のワンちゃんで多く見られる病気ですが、ワンちゃんほどではありませんが、ネコちゃんでも発症します。

好発品種:メインクーン、ペルシャ、スコティッシュフォールド、アビシニアン

2.股関節形成不全

ネコちゃんの股関節が発育の段階で形態的な異常を起こし、様々な症状を引き起こす病気です。一般的に両側の股関節に発症することが多いといわれておりますが、片側性の場合もあります。

好発品種:アメリカンショートヘア、ロシアンブルー、ペルシャ、メインクーン、ヒマラヤン、アビシニアン

3.骨軟骨形成不全

骨軟骨異形成症は、遺伝性の関節の病気です。関節は、骨の表面を関節軟骨という弾力性のある組織で覆い、滑らかな動きができる構造になっています。しかしこの病気になると成長段階で関節軟骨の構造に異常が起こり、「骨瘤(こつりゅう)」とよばれる関節部がこぶ状に腫れた状態になり、正常な関節の運動が障害されて慢性的な関節炎の原因になります

好発品種:スコティッシュフォールド、マンチカン、アメリカンカール、ヒマラヤン、ペルシャ

7. 変形性関節症が疑われる症状

以下の症状が見られたら、関節に何かしら違和感があり痛みを感じている可能性があります。

  • 動きが鈍くなった
  • 歩き方が変
  • 座り方が変
  • 足を触れると嫌がる
  • 急に動きたがらなくなった
  • 元気がない
  • グルーミングの回数が減ることで、毛並みが悪くなる
  • 階段の上り下りを嫌がる
  • 飛び跳ねたり、ジャンプをしなくなった
そのほか、粗相をするようになる、怒りっぽくなる、やけに鳴くことが増えたなど、関節の痛みとは一見関係のないような症状でも、よく調べると実は変形性関節症を発症している場合があります。

慢性的な痛みを抱えるため、性格的な部分の変化も特徴です。動作以外の部分についても、注意してみるようにしましょう。

8. 変形性関節症の予防方法

加齢に伴いどの子も発症しうる変形性関節症については、生活習慣の改善や肥満の解消が発症を予防するカギとなります。

なんといっても大切なのは体重管理です。体重が重たいネコちゃんは、適正体重の猫ちゃんよりも3倍、関節疾患の罹患率が高いとされています。

また、関節に負担をかけないためにも、日頃から筋肉をきちんとつけるなど、適度な運動をすることも予防方法の1つです。筋肉が発達することで、関節を支えることもできます。 そのほか、関節になるべく負荷をかけないよう生活習慣を見直すことも予防になります。フローリングはつるつると滑りますので、普段の歩行でも関節に大きな負担がかかっています。

カーペットなど、滑りにくい素材のものを敷くとよいでしょう。ジャンプをするなと言ってもそうはいかないでしょうが、もしジャンプをした際にも負担が少ないように、キャットタワーや高いところの周りにはクッションを置くなど、防御策を取りましょう。 できるだけ急な方向転換、ストップを伴うような激しい運動を控えたり、室内の段差を少なくして足にかかる負担を減らす環境を整えるなどしつつ、ネコちゃんが症状を訴えていないか良く観察をしてください。

ネコちゃんの関節症は思った以上に件数が多く、何かしら背骨や関節に痛みを抱えていることが明らかになっています。

ネコちゃん自身は喋ることができず、またできるだけ痛みを隠す習性があります。そのため、少し動きが鈍かったり、寝ている時間が増えたとしても、すぐには関節炎と結び付けて考えない方も多いのですが、命にかかわる関わらない別にして、常にどこかしら体に痛みがある状態って非常につらいですよね。

人間と同じで、体の調子が悪いとなんだかイライラしたり、気持ちが落ち込んだり、食欲がなくなったりなどと、QOL、つまり生活の質が明らかに低下します。

9. できるだけ健康に、ともに歳を重ねていきましょう

ワンちゃんもネコちゃんも大変嬉しいことに年々寿命が延びてきています。体も心も元気で、年をとっても充実して幸福感を感じられる生活を送ってもらいたい、というのは飼い主みんなの想いだと思います。

病気になりやすいことが分かっていたら、できる限り発症を遅らせるよう今から予防に努めましょう。そして、もし怪しいなと感じる症状が見られたら、できるだけ早く病院を受診し、獣医の診断を受け、適切な治療を開始することが重要です。

今元気な愛猫も、必ず老い、身体が衰え、視力が落ち、そういう日がやってきます。 若くて元気な今だけを見るのではなく、これから先の未来についてもきちんとイメージを持ち、今できることにしっかり取り組み、できる最善を尽くしてあげてくださいね。


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