ペットとともに入居できる高齢者施設が増えている

ペットと暮らす 2023.06.23

ますます加速する日本の高齢化社会においては、老人ホームのほか高齢者向け住宅や関連サービスが続々登場しています。まだまだ数は足りておらず入居待ちの高齢者はいるとはいえ、その数自体は年々増加しており、サービスの種類も幅広くなっています。

その中の一つが、近年新たに登場した、愛犬・愛猫と一緒に入居できる、ペット可の老人ホーム・高齢者施設です。

目次

  1. ペットは大切な家族の一員です
  2. 高齢者とペット
  3. ペット入居可能なホームの特徴
  4. 今から考えておいてほしいこと

1. ペットは大切な家族の一員です

年齢を重ねるごとに、身体の自由が利かなくなったり、体調が悪い日も増え、若い時に比べて生活をするうえで様々な制限が付きまといます。思うようにいかないことにストレスを感じることも少なくありません。そんな高齢者の方にとっては、家族の一員となっているペットと一緒にいることで、気持ちが安らぎ癒される効果があります。

嬉しい時も悲しい時もずっと一緒にいてくれたペットと、年老いても一緒に暮らし続けたい、そんな思いを抱える方も多く、ペットと一緒に老人ホームに入居したいというニーズは年々高まっています。実際に2022年現在、全国には500件以上ものペットとともに入居できる高齢者施設が存在します。

2. 高齢者とペット

お迎え当時は身体も健康でエネルギッシュに暮らしている高齢者が、ペットをお迎えすることは少なくありません。実際にここ数年コロナ禍によるペットブームもあり、70歳を超えて新たにペットをお迎えする方も増えています。

実際に介護の必要がなく健康的に日常生活が送れる期間を示す「健康寿命」について、男性は72.68歳、女性は75.38歳だと発表されておりますので、お迎え当時はまだまだ元気で自活可能。毎日のお散歩も全く問題がないという方も多く、ペットのお世話についても不安なくお迎えを決断する方がほとんどです。

そうはいっても、先のことは当然わかりません。年齢を重ねるにつれて身体の調子が悪い日が増えるのは当然です。

特に加齢に伴い、関節の動きが悪くなり腰痛をはじめとする関節痛が起きやすくなります。 また、筋肉量が落ちることからも、トイレやブラッシングなどお世話に掛かる動作だったり、ワンちゃんを飼っている方は特に毎日のお散歩が少々苦痛になってきたりなど、だんだんとこの先一人でペットとともに健康な生活を送り続けられるかどうか不安に感じることも出てきます。

このように、自身の身体や健康状態に不安を抱え、自活が難しく、施設への入所を検討しなければならない状況になっても、ペットを飼っているから施設に入れないと思い込んでいる高齢者は非常に多くいらっしゃいます。

「ペットと一緒に入居したい」というニーズも高まってきていることから、ペット入居可能な高齢者施設が少しずつ増えてきています。

3. ペット入居可能なホームの特徴

ペット入居可能な高齢者施設では、居室部分でのみペットの飼育が可能という施設もあれば、共用部分含め自由に過ごさせることができるという施設もあり様々です。

愛犬・愛猫と一緒にご入居できる施設はその設備の充実さが特徴です。 例えば屋上庭園・屋上ドッグランなどのほか、エントランスには足洗い場があったり、床にはペットが滑らないようなコーディングが施されていたりなどは、多くのペット可施設で整えられています。

更には、ドッグトレーナーやトリミングの資格を持つスタッフがサポートしてくれたり、また入院中の愛犬のお世話代行やトリミングサービス、ドッグカートのレンタルなど愛犬の為のサービスも充実しています。そして万が一飼い主さまが亡くなってしまい、身元引受人がいない場合は、しかるべき機関を頼って里親探しをしてくれるなど、ペットが不幸になることがないように尽くしてくれます。

一方でペットの世話は保険サービスの対象外のため、割高です。飼育者が自らお世話できない場合は、ペット管理費や散歩費などがかかります。また、契約終了かペットが逝去した際の手続きや、居室の汚損滅失がある場合に原状回復として別途実費精算が必要になります。

そのほか、他の入居者とのトラブルや、万が一ペットが原因で他の入居者が点灯してけがをしてしまった場合など、治療費等の支払いが必要となります。

飼育可能な品種については基本的には犬と猫に限定されている施設が多いのですが、中にはウサギやモルモットなどその他の小動物も受け入れている箇所もあります。

また、1室1頭まで、という箇所もあれば、1室3頭までOKという場所まであったりと、条件も様々です。自立型の有料老人ホームやシニア分譲マンション、サービス付き高齢者向け住宅などではペットと一緒に生活できるホームがありますが、それぞれの場所でペットと入居する要件が異なっていますので、いずれにせよ事前に問い合わせてみましょう。

気になる費用についてですが、エリアや建築年数によって幅があります。

入居一時金も0円のところもあれば2,000-5,000万円など高額に及ぶケースもありますが、月額料金はだいたい年金+αで何とかやりくりできそうな20万円台が大半です。なかには10万円以下という施設もあります。

4. 今から考えておいてほしい自分が高齢になった際に飼い犬・飼い猫をどうするか

ペットは大好きな飼い主さまと一緒に暮らすことに幸せを感じています。同じように、飼い主さまからしても愛犬、愛猫の命が尽きるまでは、ずっと面倒を見ようという想いでお迎えいただいていると思います。

しかし、早ければ75歳、遅くとも80歳を過ぎれば、自身の体力の衰えを感じることもあるでしょう。足腰も問題がなく、毎日散歩に行けていたのに、足が痛くてお散歩に連れていけなくなった、家事を自分ですることが難しく一人暮らしが限界を迎えている。けれども自分がいなくなったら、この可愛いペットはどうなるのだろうか。

そんなリスクは、70歳を超えてペットを新たにお迎えする方は、必ず付きまとうとお考え下さい。

そうした選択に迫られて、今も今までも、多くが自宅にとどまる、時折ヘルパーさんなどを頼みながら、なんとかペットがいる暮らしをやりくりする、という方が大半でした。しかし、今回ご紹介したようにペットとともに暮らせる施設も沢山あります。もちろんある程度のお金は必要ですが、そもそもペットを飼うということ自体、お金がかかります。お金以前の問題として、飼い主さまが健康で自活できることが大前提です。

犬も猫も短くても10年程度、長寿の場合は15年以上生きます。

万が一、ご自身が入院したとき、お世話を頼む相手はいますか? もし足腰が弱りお散歩に行けなくなったとき、誰かに頼むことは可能でしょうか。 そして一人で生活していくことが困難になったとき、ペットとともにどこかの施設に入ることは可能ですか?

もしそれが難しくても、必ずご自身の手できちんと愛情を持って世話をしてくれる里親さんを見つけることは可能ですか?

何十年も前からずっとペットを飼っていて、ペットがそばにいるのが当たり前だった方も多く、そんな方々から施設に入るために可愛がっているペットを手放すようにと命ずることは非常に酷です。

また別の観点から言っても、飼い主はペットの終生飼養の義務があることから、本来は自身が高齢になったから、世話ができないからという理由で保健所に連れていくことなど、あってはならないのです。

ある程度のサービスはお金を支払えば、外注で賄うことができます。

まずは自身の健康が一番重要です。起き上がれなくなったら、歩けなくなったら、ペットのお世話を日常的に行うことは不可能だからです。

高齢でペットのお迎えを考えている方はまずはご自身の健康状況と、そして経済状況を照らし合わせて、今一度考えてみてください。


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