猫に多い「心筋症」について学ぼう
目次
1. はじめに
今回は若齢の今だからこそ知っておきたい、ネコちゃんに多い心筋症についてお伝えさせていただきます。 おおよそ1歳から5歳くらいまでの若齢と呼ばれる時期は、人間で言えば10代後半から30代半ばにあたります。体力も気力も充実していることに加えて、腫瘍や腎臓病など加齢に伴い発症する病気とはまだまだ無縁な時期で、健康上大きな問題なく過ごされている方がほとんどだと思います。 実際に飼い主さまとしても「病院のお世話にならなさ過ぎて、ペット保険に加入したのがもったいない」なんて、内心思われている方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、実はネコちゃんって心臓病が多いことはご存じでしたか?
しかも、ワンちゃんの心臓病と異なり、ネコちゃんの場合は比較的若齢で発症することが多いのです。加えて「心雑音」などの目立った兆候がなく、非常に発見しづらい点が特徴です。
2. 猫ちゃんの心臓病
ネコちゃんの心臓病については、特に「心筋症」と呼ばれる、心臓に機能障害を起こす心筋の病気を多く発症します。猫でよく見られる心筋症は、主に以下の3つです。- 肥大型心筋症(ひだいがたしんきんしょう)
- 拡張型心筋症(かくちょうがたしんきんしょう)
- 拘束型心筋症(こうそくがたしんきんしょう)
3. 多く見られる3つの心筋症
肥大型心筋症(ひだいがたしんきんしょう)
肥大型心筋症とは、心筋が異常に肥大して分厚くなってしまい、正常な機能を果たせなくなる疾患です。症状としては、呼吸困難や嘔吐、食欲不振などが挙げられます。症状も無く身体検査で偶然見つかるケースもあれば、呼吸困難を起こし救急で運ばれて発覚するケースもあります。
メインクーンやラグドール、アメリカンショートヘア、ペルシャなどが好発品種であるといわれてますが、その他の品種の発症も非常に多くあります。
拡張型心筋症(かくちょうがたしんきんしょう)
拡張型心筋症とは、心室の内側部分の空洞が拡がり、心室の収縮機能が低下する病気です。血液循環の悪化で体に酸素が十分行き届かなくなって疲れやすくなるため、あまり動かなくなり、食欲も低下します。息苦しいことから呼吸が荒くなり、嘔吐や失神などの症状が起こります。しかし無症状のケースも少なくありません。
アビシニアンやシャムに良く発症するといわれています。
拘束型心筋症(こうそくがたしんきんしょう)
拘束型心筋症とは、何らかの原因で心筋が固くなり、心臓がうまく動かなくなる病気です。初期は無症状のことがほとんどです。肺から心臓へと血液がうまく流れないため、心臓が送り出せなくなった血液が肺の血管や、大静脈で渋滞を起こしてしまい、血栓ができゃすくなります。
好発品種は分かっておりません。
4. 最も発症数が多いのは肥大型心筋症
上記3つの心筋症の中で最も多く発生するのが肥大型です。 ネコちゃんの肥大型心筋症は有病率約15%ととても高く、発症年齢も3ヶ月から17歳と幼少期から高齢の猫までとても幅広いことが特徴です。心筋症の発症原因自体、はっきりと解明されていません。肥大型については遺伝性の関与が疑われていますが、感染症が原因なのではなどの説もあり、いずれにしても詳細が不明なのです。
肥大型にしても拘束型にしても拡張型にしても、無気力や食欲低下、嘔吐、体重減少などの症状が代表的です。また血栓が詰まることで後ろ足にマヒが見られることもあります。
とはいえ、初期については何も症状が見られないことが多く、異変を感じて病院を訪れた際は既に血栓症を起こしていたり、肺や胸に水が溜まり呼吸困難を起こしていたりとすでに手遅れの状態も少なくありません。
5. 日常的に呼吸数のチェックをしよう
このようにネコちゃんの心筋症は非常にわかりづらく、かつ、原因不明のため効果的な予防法もありません。だからこそ普段から子猫のときからバランスの良い食事と適度な運動で健康な体を作っておくことや、肥満にさせないことは大切です。
また、日頃から安静時の呼吸数をチェックしてください。犬でも猫でも、呼吸数が1分間で40回以上が続く場合は異常です。 加えて普段から口呼吸をしていないかも、確認するようにしましょう。
日頃から呼吸の仕方や回数を見ていると、呼吸に異常があった際に「なにかがおかしい」とすぐに気づくことができます。無症状のうちから確認して正常な呼吸の状態を知っておくことが大事です。
6. 通常の血液検査にプラスして超音波検査も
初期症状が無症状のことが多い可能性も踏まえると、やはり1年に1回は定期検査を受けることをおすすめします。猫の心筋症は聴診や通常の血液検査では見落とされることが多い疾患です。通常の血液検査に加えて、心臓の超音波検査もオプションで付けるようにしましょう。
安い金額ではないこともあり、「うちの猫は若いからまだ大丈夫...」という理由で定期検査を怠っている人もいますが、若齢でも発症のリスクはあります。
定期的に検査を受けるようにして、できるだけ早期発見、早期治療できるように努めることがいうまでもなくこの命を引き受けた飼い主の務めです。