ワンちゃんの骨関節疾患リスクを知ろう
目次
- はじめに
- ワンちゃんの骨関節疾患とは
- ワンちゃんは意外と足腰が弱い
- QOLを大幅に悪化させる骨関節疾患
- 寒くなるこれからの時期は特に注意
- 骨・関節トラブルの原因に!知らずにやっているかもしれないNG行動
- おわりに
1. はじめに
さて今回は、寒暖差によって起こりうるワンちゃんの病気の中で非常に多い骨関節疾患について解説します。ワンちゃんが骨や関節にトラブルを抱えると、強い痛みを感じ、悪化すると自分で立ち上がることや、歩行が困難になることもあります。加えて、ワンちゃんやネコちゃんはその習性として、具合の悪さを極力隠そうとする傾向があるため、飼い主さまが気づく時にはすでに…ということも少なくありません。
骨・関節系の疾患はできるだけ早い治療開始がその後の回復、症状改善のカギとなっています。
2. ワンちゃんの骨関節疾患とは
ワンちゃんの骨関節疾患とは、リウマチや関節炎、膝蓋骨脱臼や股関節形成不全などの、いわゆる関節部分に起きる疾患の総称です。いずれの疾患も痛みや動かしづらさから始まり、症状が深刻になるにつれて歩くことを嫌がって散歩中に座り込む、走ったりジャンプしたりすることをしたがらなくなる、関節部分をしきりに舐める、食欲が低下するなど様々な症状を引き起こします。
私たち人間も年齢を取るにつれて、腰痛やひざ、首の痛みなどに悩まされる方は多いと思うのですが、ワンちゃんも人間同様、関節疾患になりやすいのです。
3. ワンちゃんは意外と足腰が弱い
私たち人間よりも走るのも早く、動きも俊敏。運動能力に優れているように見えるワンちゃんですが、実はとっても足腰は弱いことが分かっています。ワンちゃんは私たち人間と異なり、4本の足で歩きます。なんとなく二本足で歩く人間より、四足歩行のほうが4つの足に圧が分散されて負担が少ないのでは、と誤解されそうですが、二足歩行の人間のほうが、大きな負担を受け止めるため、関節ははるかに丈夫にできています。 加えて、背中部分と地面が平行な状態のワンちゃんは、我々よりも圧力を受ける面が広く、それゆえ足腰に負担がかかりやすいのです。
ワンちゃんの、骨・関節のトラブルは、犬種問わずどの子も発症リスクはありますが、特にトイプードルやチワワ、ポメラニアン、ヨークシャテリアやダックスフンドなどの小型犬に発症しやすいことが分かっています。 足腰の痛みは、加齢や肥満により引き起こされる場合もありますが、運動不足による筋力の低下が原因になったり、逆に激しい運動によって引き起こされることもあります。
また必ずしもシニア犬ばかりが発症するわけではなく、若いワンちゃんでも骨や関節のトラブルを抱えている子は多くいます。うちはまだ大丈夫、という油断は禁物なのです。
4. QOLを大幅に悪化させる骨関節疾患
骨や関節の疾患というと、直接命にかかわる、ということはないので軽く捉えられがちではありますが、これらの関節疾患はワンちゃんの毎日の生活に大きく影響します。 いずれの場合も、痛みを引き起こすため、触られるのを嫌がるようになったり、さらに症状が悪化すると歩行不全や立ち上がることができなくなります。もともとお散歩が大好きだった子が、あまり外を歩けなくなり元気がなくなったり、いつもどこかしら痛みがあるためイライラして性格がきつくなったりなど、疾患それ自体は重症でなくとも、QOL、つまり生活の質を大きく低下させる病気なのです。
5. 寒くなるこれからの時期は特に注意
冬になると、ワンちゃんの骨や関節のトラブルは急増します。 もう11月も半ばです。これから日に日に気温が下がっていくでしょう。ワンちゃんの体は冷えやすくなり、血行が悪くなり、筋肉がこわばります。そうすると、もともと柔らかかった筋肉が硬くなり、腰やひざ、肩といった、よく動かす部位には、いつも以上に大きな負担がかかってしまい、結果として痛めやすくなるのです。これからの時期はお散歩前にはマッサージをして、身体を少し温めること、いきなり走り出すのではなく室内で少し運動をしてから外に出るようにするなど、お散歩前には人間でいう準備運動を行うことも大切です。
6. 骨・関節トラブルの原因に!知らずにやっているかもしれないNG行動
以下では、実はワンちゃんにとって非常に負担がかかっている行動について、お伝えします。今回我が家の愛犬がヘルニアを発症したことで、かかりつけ医から、普段の行動や接し方についても教えていただく機会が非常に増えました。 そのなかで、知らず知らずのうちにやってしまっており、後悔したことも非常に多いのです。
ぜひまだ若く健康な愛犬と暮らす方々も、うちの子と同じ状況に陥らないために、もし該当の行動を行っていたら本日からすぐ止めていただきたい、より一層気を付けていただきたいという思いでお伝えさせていただきます。
NG行動① 縦抱っこ
抱っこをするときは、地面と平行になるように、片手はワンちゃんの前肢の下、片手でお尻を支える状態での抱き方が正解です。抱っこ中は自分の体にワンちゃんの体を密着させてください。人間の赤ちゃんを抱っこするように、顔を上、お尻が下の縦抱きの姿勢は、ワンちゃんの足腰に大きな負担がかかっています。ちなみに私はこの事実を知らなかったこともあり、子犬時代から7年もの間、縦抱っこを繰り返し、結果今にいたります。
最近、ワンちゃんの抱っこ紐(スリング)もよく売られていますが、あれについても避けたほうが良いでしょう。ワンちゃんにとっては非常に不自然な姿勢で固定されていることとなります。 抱っこ紐からちょこんと顔を出す愛犬、想像しただけでとんでもなく可愛らしいのは分かりますが、ワンちゃんの身体に負担を掛けるアイテムの使用は、人間の自己満足に他ならないのかもしれません。
NG行動② 二足歩行
ワンちゃんの二足歩行も、股関節と背骨にとんでもない負担がかかっていることが分かっており、関節疾患のリスクを高めます。たとえばオヤツなどを欲しがって、後肢だけでとんとんと立つ姿、みたことあるのではないでしょうか。とっても可愛いですし、この事実を知らない人からしたら「歩けるなんて、うちの子は天才じゃないか!」なんて、芸の一つを身に着けたかのように喜んでしまっている方もいるかもしれません。
しかしワンちゃんの骨格は四足歩行に適した構造になっており、それゆえワンちゃんの立つという行動には、大きな負担がかかっています。 一度でも飼い主さんが喜んでしまったならば、ワンちゃんは「立てば大好きな飼い主さんが喜んでくれる」と学習し、何度も繰り返してしまいます。
二足歩行をするケースは、通常飼い主さん側も立っている状態が多いと思います。すでにたちグセがついてしまっている場合、「ダメ!」「NO!」などと叱ることは、ワンちゃんからすると「今まで喜んでいたじゃん」「なんで?」と、混乱する原因になります。 まずは飼い主さまがかがんで、ワンちゃんと同じ目線に立ち、「(しなくて)いいよ」「ありがとう」とそっと腰部分を抑えるようにしてください。根気強くやめさせていきましょう。
NG行動③ 前脚をもって左右に動かす
ワンちゃんには鎖骨が存在しません。 これがどういうことかというと、鎖骨にしっかりと前脚が繋がっている状態ではないため、人間のように腕をグルグル回したり、自由な角度に動かすことはできないということです。つまり、ワンちゃんの四肢というのは、身体を支えたり前後に動かすだけの役割しか持たないのです。これを左右に動かすような動作がどれだけワンちゃんの身体に負担がかかっているかお分かりいただけましたよね。
一時期SNSで、ワンちゃんの前肢をもって、音楽に乗せて踊らせるような動画が流行ったことがありました。左右に動かして、されるがままのワンちゃん。確かにとっても可愛かったですが、非常に負担がかかっている行為です。 骨格の作りとして、ワンちゃんの肢を横に広げることはできないのです。絶対にやめてください。
NG行動④ 頭を下げての食事
食器の位置が低いと、首を下げて食事をするようになります。そうすると、前足や背中、首にも負担がかかってヘルニアや腰痛などを引き起こすこともあります。愛犬の食器、子犬時代からきちんと買い換えましたでしょうか?幼かったころと現在では確実に体のサイズや体高が異なるはずです。現在の身体のサイズに合わせた食器を選び、体高に合わせた位置で食事をすることが大切です。
無理に首を下げる・上げることのない位置で食事ができるようにスタンドタイプや、台を活用して調節してあげてください。
7. おわりに
いかがでしたか。今回は、若いワンちゃんも気を付けて、骨・関節トラブルと、今日から辞めてほしいNG行動についてお伝えしました。大切な愛犬の身体の調子が悪いと、自分のこと以上に応えますよね。寒い時期は人間同様、どうしたって病気やけがのリスクが増えます。 飼い主さまが今一度気を引き締めることで、大切な愛犬の健康と充実した日々を守ってあげてくださいね。