【緊急時の備え】愛犬・愛猫の心肺蘇生法のポイントと注意点について学ぼう9点

お迎え準備 2024.2.23

目次

  1. はじめに
  2. 「ペットの心肺蘇生法」飼い主として知っておきましょう
  3. まず初めにすべきことは「意識の確認」
  4. 心肺蘇生前の2つの確認
  5. 心臓マッサージを始めよう
  6. 人工呼吸のやり方
  7. おわりに

はじめに

2月ももう下旬。毎日寒い日が続いていますね。

気温が低く、また湿度が低いこの季節。ワンちゃん、ネコちゃんともに呼吸器や骨関節トラブルも起きやすくなります。くれぐれも体調にはお気をつけて。真冬の寒さを乗り越えましょう。

さて、今回はワンちゃん、ネコちゃんの心肺蘇生法についてお伝えさせてください。

「ペットの心肺蘇生法」飼い主として知っておきましょう

人間についてでしたら、教習所や職場の研修で一度は受けたことがある方が多いと思いますが、愛犬・愛猫と暮らす方まには、ぜひペットの心肺蘇生法についても是非知っておいてほしいと考えています。

今、とても元気な愛犬・愛猫を目の前にしていると、まだまだ想像がつきづらいかもしれませんが、愛犬・愛猫も間違いなく年をとります。また、交通事故や熱中症、溺れたなど、何らかの病気や事故などで急に容態が急変する可能性もゼロではありません。

そんなときは一番に「病院に向かわなければ」と考える方が多いと思いますが、こうした緊急時、病院に到着するまでの間に、ご自宅でもできることがあります。

「素人が何かするより何もしないほうが良いのでは?」と思う方もいるかもしれませんが、応急処置はご自宅でも実施したほうが効果的です。

起こってはほしくないことですが、万が一ご自宅で「心臓が止まっている!?」という事態に陥った場合に、飼い主さまがとるべき行動をお伝えします。

まず初めにすべきことは「意識の確認」

考えたくはないことですが、万が一に備えて具体的にイメージしてみてください。

帰宅時や朝方、ぐったりしていたり、意識がもうろうとしている、そんな愛犬・愛猫の姿を発見したとしましょう。

まず第一に、お口を開けて、喉の中になにか詰まったりしていないか確認をしてください。

ぐったりしている時に、口を開けさせて奥まで確認できるようであれば、意識もなくなっている可能性が高いです。意識があれば確実に嫌がったり暴れたりという行動が見られます。

もしこの時に、嫌がる様子や素振りがあるのであれば、【心臓が止まっている】ということはないので、心肺蘇生は必要ありません。

この場合は、かかりつけの動物病院にすぐに電話をかけて、ぐったりしている旨を伝えましょう。(かかりつけ医が休診日や夜間で繋がらない可能性もあるので、万が一に備えて近くの夜間動物病院の連絡先は事前に調べて目に入りやすい場所に置いておくようにしてください。)

もし喉に何か詰まっているのが見える場合も、動物病院への電話をすぐに行い、判断を仰ぎましょう。

喉にも詰まっていない、喉の奥を見せてくれるくらい意識もないということであれば、心肺蘇生を行います。

心肺蘇生前の2つの確認

1. 心臓が止まっているかどうかの確認

まずは心臓が動いているかどうかの確認を行います

。 心臓が正常に動いている時には、愛犬・愛猫の左側の胸に耳を当てると「ドックン・ドックン」という心拍音が聞こえます。 しっかりと音が聞こえた時は、当然ながら心臓が動いているということになりますので安心です。

しかしながら、これは医療関係者も判断をすることがとても難しいといわれています。例えば、とてもゆっくり動いている状態なのか、それとも止まっているのか・・。 また、このような緊急時に冷静にその判断を行うことは、特に私たちのような医療関係者ではない人間からするとハードルが高いです。

ここをじっくりと確認する必要はありません。 ぐったりしている、意識がないという状態であれば、すぐに次のステップに進みましょう。

2. 呼吸が止まっているかの確認

つぎに口元に耳を近づけて、呼吸音が聞こえてくるかを確認します。 併せて、口元に手を当てて、手に空気があたるかも確認しましょう。

分かりやすい方法としては、毛が生えている動物たちなので、少し毛を取って鼻先に近づけるという方法もあります。この時に毛が動かなければ呼吸も止まっている可能性が高いです。

こちらもじっくり確認する必要はないので、よくわからなければ判断を粘らずに、次のステップに進みましょう。

心肺停止の確認・判断は、精密さよりスピード重視

先の1,2では「心・肺停止の状態かどうか」の確認方法をご紹介しました。

ここで重要な点は「時間をかけて正確に判断する」ではなく、1分1秒でも早く判断を下し、次の準備にかかることです。

人間でも同様ですが、じっくり心肺停止かどうかを確認していくよりも、AEDなどの準備を進めていくほうが優先です。 ワンちゃん、ネコちゃんの場合も心臓マッサージをしていたら動き始めた、抵抗する様子が見られた、などのケースもあります。そうした動きが出るようであればその時点で中止すれば問題ありません。

それまでは心臓マッサージを優先して行うべきとされています。

心臓マッサージを始めよう

※練習したくなる方もいるかもしれませんが、心臓が動いている状態の健康なワンちゃんネコちゃんへの心臓マッサージは行わないようにしてください。あくまでイメトレにとどめましょう。

①まずは心臓の位置の確認

まずは心臓の位置を確認しましょう。

最初に、愛犬・愛猫の体の右側を下にして(床側にして)寝かせます。そして、愛犬・愛猫の左腕を関節に沿って曲げて、愛犬・愛猫の体に近づけた時に、人間でいう「ヒジ(肘)」が当たる胸の位置に、「心臓の先端」があると言われています。

そのあたりを中心に胸を押すことになります。

身体の右側を下にして、横に寝かせて、愛犬・愛猫の左手を曲げた際に、左ひじに隠れる位置に心臓があります。

※フレンチブルドッグなどは心臓の位置に要注意

胸がたる型のフレンチブルドッグやパグについては、仰向けにして胸の真ん中、一番高いところを圧迫します。

②肘は曲げずに体重をかけるイメージで押す

心臓の位置が確認出来たら、心臓マッサージに移ります。

まずは、左右の手のひらでパーとグーを作ってください。そして、パーの上にグーを重ねて、①で見定めた心臓の位置に手を置きます。

マッサージをする際、肘は曲げないでください。腕の力で押す、のではなく、全体重をかけて肋骨ごと胸を押していきます。横から見て、胸の1/3まで沈み込むくらいの力で押しましょう。

③胸を押す→力を抜く、の繰り返し

心臓マッサージとは、動かない心臓に変わって心臓を動かすことで、心臓の中の血液を全身に送り出す救命方法です。止まってしまった心臓をポンプのように動かすことによって、脳や臓器などに血液が届かず、酸素不足から機能停止になることを防ぐのです。

そのため、胸を押し続けてしまうと、一度押し出した血液が心臓に戻ってこれず、心臓の中の血液が入る余地がなくなってしまいます。つまり、いくら心臓を押しても、送り出す血液がないため、意味がない状態になります。

これを避けるため、心臓マッサージをする際は、「胸を押したあとに押す力を緩め、再度胸を押すためのスペースをつくる」イメージがとても重要です。

胸を押すペースは「アンパンマンのマーチ」くらいというのが有名です。

私と同じようにお子様がおらず、アンパンマンのマーチがどの歌かが分からないという方もいらっしゃるかもしれませんが「そうだ、おそれないで 生きる喜び 愛と勇気だけが友達さ」の歌ですよ。一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。

早すぎず、遅すぎずで1秒間に2回くらい押すようにしましょう。 引用:アンパンマンのマーチ 作詞:やなせたかし 作曲:三木たかし

※超小型犬や3kg未満のネコちゃんの場合

上記が基本的な心臓マッサージの方法となります。

しかしながら、超小型犬やネコちゃんの場合は、両手で押す方法ではなく、上の図のように親指を上にして、胸全体を手のひらで挟み込むように圧迫することもできます。

ただし、手のひらが疲れてきて力が入らなくなる場合はやはり上記のように両手にて圧迫を行うことも可能です。

この時に骨格が小さなワンちゃん、ネコちゃんの場合、肋骨が折れてしまう可能性もあります。しかし、命があれば、骨折は治療することができます。緊急事態については、骨折と命であれば命の方が優先です。

TIPS!2名以上いるならば、途中で交代すべし

心臓マッサージを行うのはとても体力を使います。 可能であれば、2分間マッサージを行ったら別の人に交代しましょう。

人工呼吸のやり方

次に、人工呼吸の方法についてお伝えします。体勢については下記のイメージになります。

ワンちゃん・ネコちゃんの体勢は、心臓マッサージのときと同様です。体の右側を下につけ床に寝かせた状態にし、抱え込むように飼い主さまが背後から回り込みます。

人工呼吸というとマウスツーマウスのイメージがあるかと思いますが、ワンちゃん・ネコちゃんの場合は口から口ではありません。ワンちゃん・ネコちゃんの「鼻から」、私たちの息を吹き込みます。

ここは大事なところなのでもう一度言いますね。口からではなく、鼻から息を「ふー」と吹き込んでください。時間は約1秒です。1秒かけてゆっくりと息を吹き込みましょう。

心臓マッサージで胸を30回押したら、2回息を吹き込む、これを繰り返します。

この際、口の横からは息が漏れないように、唇の端(周りの皮膚)はしっかり隙間をふさぎましょう。

また、吹き込む息の量は、身体の大きさによって異なりますので注意が必要です。身体が小さい子は当然肺の大きさも小さいです。このような状況に陥ると、意を決して大量に息を吹き込んでしまいがちですが、体の大きさに合わせて、入れすぎないように慎重に行ってください。

この時に口から漏れずに肺に空気が入っていれば、少し胸が膨らむ様子が横目で見えるはずです。

おわりに

いかがでしたでしょうか。

普段、おうちで心臓マッサージや人工呼吸が必要になるような状況は想定していないと思います。もちろん、こんな状況はないに越したことはありません。

しかし、世の中絶対はありませんよね。そして、急に必要になった時に調べようと思っても動揺してしまい、情報に辿り着かないことも多くあります。

繰り返しになりますが、よく分からない場合は確認に時間を掛けず、ひとまず心肺蘇生を開始しましょう。

病院に連絡を取り、病院に到着するまでの間に、心肺蘇生をするかどうかでも、助かる可能性が大幅にアップすることが分かっています。

災害についても定期的な避難訓練が実施されるように、元気な時にシミュレーションしておき、いざという時の準備を備えておきましょう。

大切な家族の一員であるペットたち。

異変に真っ先に気が付くことができるのは、当然飼い主だけです。そして万が一の事態に直面した際に、とっさの判断や行動を迫られるのも、やはり飼い主さまになります。

普段どれだけ準備したか、今まで知らなかったことをきちんと知ろうとしたのか、学ぼうとしたのか、そうした姿勢がいざというときに大きく関係してくるのではないかと思うのです。

大切な愛犬・愛猫が、このお家で良かった、この人の家族になれて良かった、生涯を終える際、そんなふうに思ってくれるような、素敵な飼い主になれるよう、こちらの読み物記事を通じて私も一飼い主として、皆さんと共に学び続けていけたらと考えています。

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