お迎え直後に気を付けたい、家庭内の骨折事故
目次
はじめに
今回は気を付けたい家庭内の事故である「骨折」についてお伝えいたします。誤飲誤食と併せて多いのが、この、骨折です。しかも、骨折については月齢10か月までに約9割が発生しています。なぜでしょうか。
それについては、まずは、成犬になる前で骨が細いことも要因ではありますが、お迎え直後の不慣れさや飼い主様の知識不足も大いに関連しています。 飼い主さまがしっかりと学び、普段から十分に気を付けてあげることで、愛犬の骨折のリスクを限りなく低く抑えることができます。
ペッツファーストでお迎えいただいたワンちゃんのうち、特に、イタグレ、ポメラニアン、ミニチュアピンシャー、トイプードル、豆しばに骨折が多くみられますが、決してこの5品種以外は骨折しづらい、というわけではありませんのでご注意ください。どの子にも骨折のリスクはありますので、くれぐれも愛犬に痛い思い、悲しい思いをさせないように気を付けてあげて下さい。
最初のピークはお迎え直後の月齢4カ月
まず、ワンちゃんの骨折についてですが、先ほど述べたように月齢10か月までに骨折の9割発生しています。これについては10か月まではまだ体も心も子犬の部分が大きいため、骨がまだ頑丈ではないことに加えて、ちょっとした刺激に興奮しやすかったり、これをやったら危なそうだな、なんていう危機回避能力が身についていなかったりということが挙げられます。骨折発生率の時期に着目しますと、まずお迎え直後の月齢4か月頃にまず最初の大きい波があります。 これについては、新しい環境に慣れていないこと、や、飼い主様側で「危険な行為」についての認識がなく、知らず知らずのうちに危険にさらしてしまっていることが原因です。
お迎え直後の「骨折」3つの原因
高所からの落下
お迎え直後の骨折の原因として最たるものは、高所からの落下です。ソファやベッドから飛び降りることで負荷がかかり前脚を骨折してしまう、ソファから着地した際にフローリングで滑って転んでしまうなどがあげられます。きちんと着地することができれば骨折することはありませんが、骨が細い小型犬にとっては、その都度大きな負担がかかっています。まずはソファやベッドに登らせないことが一番ですが、一度覚えてしまっている場合は、それは不可能です。
できるだけ飼い主さまが見ていない状態で高所に飛び乗る、飛び降りる状況を作らないことと併せて、万が一飛び降りても負担にならないように、ソファやベッドにペット用のステップを設置してあげましょう。フローリングの上にペット用マットやクッションなどを置いて、床に直接ジャンプしないように家庭内の環境を整えてあげることが重要です。
子犬のうちは特に興奮しやすく、ごはんやおやつをもらえるとなると一気にテンションマックスに!後ろ脚だけでぴょんぴょんとジャンプをして飼い主さまに飛びつくシーンもよく見られますが、こういった行動も足に負担をかけています。その一度だけでは骨折することはないにせよ、積み重なるにつれて関節に負担をかけています。併せて注意してあげて下さい。
抱っこして落としてしまう
お迎え間もなく、飼い主さまもワンちゃんの抱っこの仕方に慣れていません。またワンちゃん自身も人間に抱っこをされることにまだまだ不慣れです。抱っこをしようとした抱き上げた際に子犬が思いもかけない動きをして、床に落としてしまう、というケースも非常に多いです。これについては、以前もメルマガでお伝えしたように、必ずご自身も座った状態で抱っこすること、子犬がじたばたと暴れたり、体をよじるようならば無理に抱っこをせずやめておくことが大切です。
ワンちゃんが幼い頃は社会化のために、色々な人に会わせたほうが良いのですが、ご友人やご家族が抱っこをしたいといったときも、必ず低い位置に座ってもらって、万が一危ない時にもすぐに支えられるよう、ご自身も手を添えるようにしてあげましょう。普段からペットに慣れていない方との触れ合いは、更に事故のリスクが高まります。
また、なかには抱っこが嫌い、苦手というワンちゃんもいますが、これについては、決して飼い主さまのことが嫌いというわけではないので落ち込まないでください。あくまでワンちゃんの気持ちや心のペースに寄り添ってあげて、ストレスやケガのリスクがない状態で生活をさせてあげることが大切です。
ドアに挟んでしまう、踏んでしまう
次に、飼い主さまの注意不足により、扉に挟んでしまう、踏んでしまうことによる骨折も多く挙げられます。子犬は飼い主さまがお家にいてくれるのが嬉しくて、室内で動き回る飼い主さまの足の周りをちょこちょこと歩き回ることも多いのではないでしょうか。とっても可愛くて愛情に満たされる気持ちになりますね。
ただ、そんなとき、自分が一歩踏み出したその先にワンちゃんの前肢があって踏んでしまった…というケースが非常に多く発生しています。ただでさえ小さな子犬は機敏に動き回り、私たち人間からすると予期せぬ動きをします。アッと思ったときには間に合わずに、飼い主さまが罪悪感にさいなまれているケースを数多く見てきました。骨折で命を落とす可能性は非常に少ないにせよ、愛犬がつらく、苦しい思いをすることは言うまでもありません。
また、扉に尻尾を挟んでしまい骨折させてしまった、などの事故も多く聞かれます。人間だけが暮らしていた時は扉を強めに押して閉めたり、時には冷蔵庫の扉を足で閉めたり・・・なんて雑な行動も許されたかもしれませんが、小さな生き物を飼うということは、今まで当たり前にやってきた一挙一動を見直す必要が生じるということです。 過保護といわれてもかまいません。慎重すぎるくらいに気を付けてあげてくださいね。
二度目のピークは月齢8ヵ月~10か月
一度お迎え直後にピークを迎えたのちは、いったん骨折リスクは低減し、また少し慣れた半年頃に急増する傾向があります。月齢でいうとおおおよそ8ヵ月~9カ月のことが多いです。これについては、身体が成犬へ近づく中で運動量が増えることが原因とされています。その内訳としては相変わらずお迎え直後同様に、家庭内の高所からの落下によることが最多です。以前は乗れなかったソファやテーブルなどに飛び乗ることを覚えたり、室内で猛ダッシュ、急ターンをしたり、階段の上り下りを覚えてしまった結果、まさに調子に乗ってジャンプをして着地に失敗、床で滑ってしまい骨折してしまうというケースが多く見られます。
それに加えて、お出かけ時のトラブルも骨折の原因として挙げられます。
この時期のワンちゃんは、人間でいうと12歳程度。とっても元気、そしてやんちゃです。3-4か月の頃の赤ちゃんっぽさは抜けた反面、無限のエネルギーと自分の意思を持ち始めます。とにかく遊びたくて仕方ない!エネルギーを持て余しており、お外に行くと大喜び!そして好奇心が旺盛です。色々なことに興味を持ちます。
およそ10か月以降から、危険に対する判断能力や危険予知能力が身に着くといわれていますが、この時期はまだ「これは危険かも」「これはやめておこう」などと察する力がワンちゃん自身にありません。危険に気付くことのできないこの時期は、予想外の事故から骨折のリスクが高まります。
飼い主さまも、ワンちゃんが可愛くて、ドッグランやカフェなど、いろいろな場所に連れて行ってあげたいと思うでしょう。散歩や公園・ドッグランなどで遊んでいる際に、ほかのワンちゃんとの喧嘩や交通事故などで強い衝撃を受け、首や頭、胸や腰、骨盤等の部分を骨折することもあります。 お散歩中に道の反対側を歩いている他のワンちゃんに向かって走り出し首輪が受けてしまい交通事故に遭うことや、去勢が済んでいない男の子の場合、お散歩中に出会う他のワンちゃんに興奮してケンカになってしまうなど、日常生活の中で多くのリスクがあります。
「慣れ」が原因の事故に注意
この時期になると、飼い主様自身もペットがいる生活に慣れてワンちゃんの一挙一動に注意散漫になっていることも多いです。もっと小さなころはお散歩中はワンちゃんとその周囲に常にピリピリして、前から自転車はやってこないか、左折しようとする車はないか、など常に緊張感をもって気を見張っていたのに、時折片手のスマホに目をくれたり、他のことに気を取られてワンちゃんへの注意が足りなくなっている瞬間があるかもしれません。また、不適切な食事を続けたことが、骨折に繋がることもあります。普通のフードよりもワンちゃんが喜ぶおやつを多く与えてしまい、”最近太ってきたから”とフードの量を制限したりすると、カルシウムやビタミンDの不足、カルシウムとリンのバランスの崩壊は骨の軟化に繋がるため骨折しやすくなります。
骨折自体は命にかかわることが少ないことは事実ですが、完治するまでに短くても1-2か月はかかります。また保険会社であるアイペット社によると、骨折のうち約7%が半年以上病院へ通院しているといいます。
また、治療費もばかになりません。平均するとトータルで23万円という金額ですが、5人に1人は、50万円以上かかったと回答しています。昨年、アイペット保険に加入しており骨折で治療を受けたワンちゃんのうち、最大で188万円かかった例もあるのです。
さいごに
どんなに気を付けても避けられないことはあります。しかし、飼い主様が気を付けて注意深く見てあげることで、格段に骨折のリスクは減らすことができるのです。どんな状況で骨折しているのか、どんな行動が足に負担をかけているのか、室内はどのような環境を整えればよいのかなど、飼い主さまがきちんと正しい知識を持ち、常日頃から愛犬の様子に気を配り、最大限気を付けてあげて下さい。新しい環境へ慣れない頃、と、慣れた頃の注意散漫な時期が、最も骨折事故が多いということを頭に入れておいてください。