ワンちゃんの分離不安

知識・お役立ち 2023.06.19

目次

  1. 分離不安とは
  2. 分離不安で見られる主な行動
  3. 分離不安になる原因
  4. 分離不安にならないために

1. 分離不安とは

分離不安とは、ワンちゃんがお留守番の間、飼い主さまと離れている間に不安な気持ちが大きすぎて問題行動や体調不良等にまで発展することを言います。

ワンちゃんは本来、群れで生活していた動物ということもあり、もともとは「ひとりぼっち」という環境は不慣れです。

これについては、きちんとトレーニングを積むことでお留守番にも慣れ、飼い主さまのライフスタイルにストレスなく順応できるケースがほとんどですが、お迎え当初に愛犬に依存しすぎてしまったり、急に生活リズムを変えたりなどによって、ワンちゃんがその生活リズムを受け入れられずストレスを感じてしまうということもあります。

一般的に3歳までに発症することが多いとされていますが、加齢により不安を感じやすくなり分離不安を発症することや、同居動物との死別をきっかけに発症する場合もあります。

2. 分離不安で見られる主な行動

以下が、分離不安でよく見られる代表的な行動となります。

ずっと吠えている

飼い主さまが在宅時はほとんど吠えないのに、留守番中に吠え続けている、という場合は分離不安を疑いましょう。

普段から外から聞こえてくる車の音やインターフォンなどの物音に警戒して吠えている、という場合は、あくまで「警戒吠え」をしている可能性が高く、分離不安の症状とは考えにくいです。

クンクンと鳴き続ける

飼い主さまが出かけようとすると察し、どこまでもついてきたり、姿が見えなくなるとクンクンと鳴くという行動が見られます。留守番中もクンクンと悲しい声で鳴き続けていることが多く、次第に疲れてふて寝をする、また目が覚めて鳴く、ということを繰り返しているケースが多く見られます。

最初は甘えん坊で可愛いと思い、ついつい放置してしまう飼い主さまが多いのですが、愛犬ももちろん飼い主さま自身もだんだんと精神的に追い詰められてしまいますので、楽観視はできません。

部屋の家具を壊す

ソファーをがりがりにする、トイレシートをびりびりにするなど、留守番中に限って破壊行動が見られる場合も「分離不安」を疑いましょう。

ただし、お留守番用のおもちゃなど、“噛んでいいもの”を与えてお留守番させたときに破壊行動がない場合は、退屈さから単に「イタズラ」をしている可能性もあります。

粗相や食糞をする

いつもはトイレで排泄ができるのに、お留守番時のみトイレシートでトイレができない場合も、分離不安の可能性があります。また、不在時のみ食糞をしてしまうケースもあります。いずれのケースも、飼い主さまが近くにいないことに対する不安や恐怖を飼い犬が紛らすためのものと考えられています。

3.分離不安になる原因

分離不安症になる原因は、恐怖体験や子犬時代の環境、遺伝的要因など様々な要因が絡み合って発症していることが多く、「これが原因だ」とはっきりさせることは難しいのですが、主に4つのことが原因ではないかと考えられています。

遺伝的なもの

分離不安のなりやすさには犬種的傾向がみられたり気質が関係するなど遺伝的要素が原因となることもあるとされています。

社会化不足

幼いころに捨てられるなどして、飼い主が何度も変わった、子犬のときにほとんど他の犬や人間に会う機会がなかった、母犬の育児放棄があったり、幼いうちから母犬と離別したりしたなどの経験も、社会化不足に繋がり、分離不安を発症しやすいといわれています。

恐怖体験のトラウマ

過去、留守中に雷や地震、不法侵入など恐怖を感じる体験をした、飼い主が長期間不在となり、強い不安や恐怖を感じたことも分離不安のリスクを高めます。

病気や老化になど後天的なもの

甲状腺機能亢進症、副腎皮質機能亢進症、神経疾患や脳疾患によるものが原因で、後天的に発症することもあります。

このように分離不安の発症には複数の原因が潜んでいることも多く、また上記のような要因を持っていても発症しない子もいれば、シニアになってから発症する子もいます。発症のきっかけとなるのは、環境の大きな変化が大きいといわれています。例えば、引っ越しや飼い主さまの就職、転職などで留守番の時間が急に増えたことや、雷や花火の大きな音、地震などの災害で恐怖を感じたりなども含まれます。

こうした出来事や環境の変化はワンちゃんの精神状態を不安定にしやすく、分離不安症を引き起こす恐れがあります。

4.分離不安にならないために

分離不安症は心の病気なので、ワンちゃんとの接し方や環境を見直すとともに、しつけやトレーニングを中心とした治療を行います。

具体的には短時間から留守番のトレーニングを実施するほか、飼い主さまの帰宅時や外出時に過度な愛情表現を避ける、散歩や食事などのスケジュールを明確化して、「飼い主さまがいない時間」を習慣づける、などの「行動治療」と呼ばれるものが中心となります。

そのほか、ハウストレーニングを行い、サークル内を自分一人の安心できる場所、と覚えさせてあげることも重要です。これについては、子犬を迎えたその日から一定の時間サークルの中に入れて慣らすことが何より大切です。 また、留守番時には疲れてぐっすり眠れるように、朝仕事に行く前に十分なお散歩に連れて行ってあげることも重要です。 その他、リラックスさせる効果のある抗不安薬を処方されることや、嘔吐の症状がある場合は制吐剤を処方されることもあります。薬剤で一時的に症状は治まるかと思いますが、根本的な解決にはなりません。

分離不安症専門の「行動治療」を専門に実施している病院もありますので、そうした病院を受診し、治療方針や今後の取り組み方を決めましょう。 いずれのトレーニングも、ワンちゃんの個性や性格に合わせて、うまくいく方法を計画し、時には修正しながら進めていく必要があります。根気強く取り組んでいきましょう。


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