犬の分離不安症:原因・症状・対処法。愛犬との幸せな生活のために知っておきたいこと

目次
1. 犬の分離不安症とは
分離不安症とは、ワンちゃんがお留守番の間、飼い主さまと離れている間に不安な気持ちが大きすぎて問題行動や体調不良等にまで発展することを言います。
ワンちゃんは本来、群れで生活していた動物ということもあり、もともとは「ひとりぼっち」という環境は不慣れです。
これについては、きちんとトレーニングを積むことでお留守番にも慣れ、飼い主のライフスタイルにストレスなく順応できるケースがほとんどですが、お迎え当初に愛犬に依存しすぎてしまったり、急に生活リズムを変えたりなどによって、ワンちゃんがその生活リズムを受け入れられずストレスを感じてしまうということもあります。
一般的に3歳までに発症することが多いとされていますが、加齢により不安を感じやすくなり分離不安を発症することや、同居動物との死別をきっかけに発症する場合もあります。

2. 犬の分離不安症で見られる主な行動
分離不安症のワンちゃんには、以下のような特徴的な行動が見られます。これらの行動は、飼い主が不在の時に特に顕著に現れることが多い一方で、一緒にいるときにも見られます。
ずっと吠えている
飼い主が在宅時はほとんど吠えないのに、留守番中に吠え続けている、という場合は分離不安を疑いましょう。
普段から外から聞こえてくる車の音やインターフォンなどの物音に警戒して吠えている、という場合は、あくまで「警戒吠え」をしている可能性が高く、分離不安の症状とは考えにくいです。
クンクンと鳴き続ける
飼い主が出かけようとすると察し、どこまでもついてきたり、姿が見えなくなるとクンクンと鳴くという行動が見られます。留守番中もクンクンと悲しい声で鳴き続けていることが多く、次第に疲れてふて寝をする、また目が覚めて鳴く、ということを繰り返しているケースが多く見られます。
最初は甘えん坊で可愛いと思い、ついつい放置してしまう飼い主さまが多いのですが、愛犬ももちろん飼い主自身もだんだんと精神的に追い詰められてしまいますので、楽観視はできません。
部屋の家具を壊す
ソファーをがりがりにする、トイレシートをびりびりにするなど、留守番中に限って破壊行動が見られる場合も「分離不安」を疑いましょう。
ただし、お留守番用のおもちゃなど、“噛んでいいもの”を与えてお留守番させたときに破壊行動がない場合は、退屈さから単に「イタズラ」をしている可能性もあります。
粗相や食糞をする
いつもはトイレで排泄ができるのに、お留守番時のみトイレシートでトイレができない場合も、分離不安の可能性があります。また、不在時のみ食糞をしてしまうケースもあります。いずれのケースも、飼い主さまが近くにいないことに対する不安や恐怖を飼い犬が紛らすためのものと考えられています。

3.犬が分離不安症になる原因
分離不安症になる原因は、恐怖体験や子犬時代の環境、遺伝的要因など様々な要因が絡み合って発症していることが多く、「これが原因だ」とはっきりさせることは難しいのですが、主に4つのことが原因ではないかと考えられています。
遺伝的なもの
分離不安のなりやすさには犬種的傾向がみられたり気質が関係するなど遺伝的要素が原因となることもあるとされています。
社会化不足
幼いころに捨てられるなどして、飼い主が何度も変わった、子犬のときにほとんど他の犬や人間に会う機会がなかった、母犬の育児放棄があったり、幼いうちから母犬と離別したりしたなどの経験も、社会化不足に繋がり、分離不安を発症しやすいといわれています。
恐怖体験のトラウマ
過去、留守中に雷や地震、不法侵入など恐怖を感じる体験をした、飼い主が長期間不在となり、強い不安や恐怖を感じたことも分離不安のリスクを高めます。
病気や老化になど後天的なもの
甲状腺機能亢進症、副腎皮質機能亢進症、神経疾患や脳疾患によるものが原因で、後天的に発症することもあります。
このように分離不安の発症には複数の原因が潜んでいることも多く、また上記のような要因を持っていても発症しない子もいれば、シニアになってから発症する子もいます。発症のきっかけとなるのは、環境の大きな変化が大きいといわれています。例えば、引っ越しや飼い主さまの就職、転職などで留守番の時間が急に増えたことや、雷や花火の大きな音、地震などの災害で恐怖を感じたりなども含まれます。

4.犬が分離不安症にならないための対処法
分離不安症は心の病気のため、ワンちゃんとの接し方や環境を見直すとともに、行動に応じた適切なしつけやトレーニングを中心とした治療を行う必要があります。以下に、主な行動への対処法を説明します。
吠え続ける行動への対処
吠え続ける行動に対しては、短時間から留守番のトレーニングを始め、徐々に時間を延ばしていくことが効果的です。また、留守番中に静かにしていられた時間を褒めるなど、好ましい行動を強化することで、ワンちゃんの不安を軽減し、落ち着いて過ごせるようになります。
クンクンと鳴き続ける行動への対処
鳴き続ける行動を防ぐには、飼い主の帰宅時や外出時に過度な愛情表現を避け、落ち着いた態度で接することが大切です。また、出かける前の儀式的な行動を控えることで、ワンちゃんが飼い主の出発を予測しにくくなり、不安を軽減することができます。
部屋の家具を壊すことへの対処
破壊行動を防ぐためには、留守番用のおもちゃを与えて退屈しないようにすることが効果的です。また、安全な環境を整え、危険な物や壊されやすい物を片付けることで、ワンちゃんのストレスを軽減し、破壊行動を予防することができます。
粗相や食糞への対処
粗相や食糞の問題に対しては、ハウストレーニングを行い、サークル内を安心できる場所として認識させることが重要です。また、規則正しい排泄のリズムを作り、留守番前に排泄を済ませる習慣をつけることで、これらの問題行動を防ぐことができます。
これらの個別の対処法に加えて、全般的な対策として、散歩や食事のスケジュールを明確化し、飼い主不在の時間を習慣づけることが重要です。また、外出前に十分な運動をさせ、疲れて眠れるようにすることで、留守番中の不安を軽減できます。さらに、必要に応じて獣医師の指導のもと抗不安薬を使用することもあります。これらの対策を総合的に実施することで、犬の分離不安症を予防し、改善することができるでしょう。
5.はじめて犬を飼う人が注意したいポイント
ワンちゃんをこれから飼いたいと思っている方も、分離不安症については理解しておくことが大切です。ここでは、そのような方のために5つの注意点を紹介します。
1.子犬の段階から少しずつ一人で過ごす時間を作る
子犬の頃から短時間の留守番を始め、徐々に時間を延ばしていきます。最初は数分から始め、ワンちゃんが落ち着いて過ごせるようになったら少しずつ時間を増やします。この過程で、ワンちゃんは一人で過ごすことに慣れ、分離不安を予防できます。
2.過度の甘やかしを避け、適度な愛情と規律のバランスを保つ
愛情を示すことは大切ですが、過度の甘やかしは依存心を強めてしまいます。適度な愛情表現と、基本的なしつけや規律を組み合わせることで、ワンちゃんの自立心を育てます。これにより、飼い主の不在時でも落ち着いて過ごせるようになります。
3.社会化を十分に行い、様々な環境や人、他の動物に慣れさせる
子犬の時から多様な環境、人、動物との触れ合いを経験させることが重要です。これにより、新しい状況に適応する能力が育ち、ストレスや不安を感じにくくなります。定期的な散歩やドッグランの利用など、様々な経験を積ませましょう。
4.急激な環境変化を避け、徐々に新しい生活リズムに慣れさせる
新しい環境や生活リズムの変化は、ワンちゃんにとって大きなストレスとなります。環境の変化は段階的に行い、十分な適応期間を設けましょう。例えば、引っ越しの際は事前に新居に慣れさせるなど、ワンちゃんのペースに合わせた調整が必要です。
5.気質や特性を理解し、適切なケアとトレーニングを行う
犬種や個体によって性格や特性が異なるため、それぞれに合わせたケアとトレーニングが必要です。例えば、活発な犬種には十分な運動を、警戒心の強い犬種には安心感を与える環境づくりを心がけるなど、個々のワンちゃんに適した対応を行いましょう。
これらの点を考慮し、ワンちゃんとの生活に備えることで、分離不安症のリスクを減らし、より良い関係を築くことができます。
6.まとめ
分離不安症は多くのワンちゃんが経験する可能性のある問題ですが、適切な理解と対処法により予防や改善が可能です。飼い主として、ワンちゃんの行動や感情を理解し、適切なトレーニングと環境づくりを行うことが重要です。ワンちゃんを家族の一員として迎え入れる前に、分離不安症についての知識を持ち、準備をすることで、より幸せな愛犬との生活を送ることができるでしょう。