犬とは違う!猫のフィラリア症

知識・お役立ち 2023.06.20

5月に入ると、あるいは蚊と聞くと、ワンちゃんにフィラリアの薬を飲ませなければいけないことは知っている、という方も多いと思いますが、フィラリアは犬に感染する病気だから猫はあまり心配しないで良い、と思われてきました。

しかし、ネコちゃんにとってもフィラリアは注意が必要な病気であり、決して油断できません。実際に、国内での調査報告では、10頭に1頭の割合で、猫がフィラリア幼虫に感染していたという報告があります。

今回は猫のフィラリア症とはどんな病気か説明します。

目次

  1. フィラリアとは?
  2. 犬とは違う、ネコちゃんのフィラリア症
  3. フィラリアってどうやって感染するの?
  4. 特に気をつけるべきシーズン
  5. もし感染してしまった場合の治療方法は?
  6. わすれずにフィラリア予防を!

1. フィラリアとは?

ワンちゃんを飼ったことがある方ならよくご存じだと思いますが、毎年4月に狂犬病予防注射が終わると、次に予防するものとしてフィラリアがあげられますよね。

フィラリア症とは、その名の通りフィラリア(犬糸状虫:Dirofilaria immitis)という寄生虫が原因となる病気です。フィラリアは蚊に刺されることで、感染が成立し、血管や心臓の中に寄生します。心臓や肺動脈に寄生しながらたくさんの幼虫を生むことから、治療にも時間がかかり、生命を脅かすおそろしい病気です。

フィラリアは血管や心臓などに寄生する虫です。 犬糸状虫という名前からわかるように、白い糸のような虫で、そうめんのような形をしています。

この虫が心臓の中にたまってしまうのです。成虫になると心臓や肺の血管の中で2~3年もの間生存します。 数十匹もの成虫が心臓に寄生するワンちゃんに比べるとはるかに少ないのですが、ネコちゃんの場合でも1〜3匹の成虫が心臓に寄生します。

2. 犬とは違う、猫のフィラリア症

寄生している成虫の数が少ないこともあり、ネコちゃんの場合は、ワンちゃんと異なりはっきりした症状が出ません。 そこがフィラリアの恐ろしいところです。

症状が進行するまでは、嘔吐や元気がない、食欲がない、体重が減るなど他の病気と見分けがつかないことが多い特徴があります。

成虫の寿命が尽きるまでは、少し疲れやすそうだな、最近吐き戻しが多いかも、なんてくらいで、ほとんど目立った症状なく過ごせることも多いのですが、2、3年の寿命を成虫が迎え、死滅したときに問題が起きる場合があります。成虫の死骸が血液に乗って肺や心臓の血管を詰まらせることで、血液循環が途絶えて突然死を起こす危険性があるのです。

3. フィラリアってどうやって感染するの?

蚊に刺されることで、フィラリアという寄生虫がネコちゃんの血管や心臓の中に寄生して引き起こされる病気です。

お散歩に行く習慣があるワンちゃんほど発生数が多くありませんが、フィラリア症は先述したように、重篤な症状が出たり、場合によっては突然死を起こす病気です。お外やベランダなどに出る子はもちろん、お外に出ないネコちゃんでも家に侵入してきた蚊に刺される可能性は十分にあります。

蚊自体は、飼い主さまの出入りや網戸の隙間からいとも簡単に室内に入ってきます。完全室内飼いだから、マンションの高層階だから大丈夫、ということはありません。万全を期するなら予防薬の定期投与をしておくに越したことはありません。

4.特に気をつけるべきシーズン

フィラリアは蚊を介して広がっていく寄生虫のため、もちろん蚊が出ているシーズンは要注意です。 北海道では7月~9月ごろ、本州では4月~11月ごろ、沖縄では1年を通して予防が必要とされてきましたが、最近は暖冬や暖房設備の発達により1年を通じて予防を行う必要も出てきています。

このため今お伝えしたシーズンはもちろん注意が必要ですが、これは目安程度にとどめて、実際の予防期間は飼い主さまがお住いの地域の獣医師の先生にご相談するのがよいでしょう。またフィラリアのお薬はフィラリアの成虫でなく幼虫を殺すお薬のため、予防は蚊がでなくなってから1か月後まで続けることが基本です。

5.もし感染してしまった場合の治療方法は?

ワンちゃんと異なり、外科手術によって静脈から心臓内のフィラリアを釣り出す方法は一般的ではなく、症状をやわらげ、炎症のコントロールを目的とした対症療法が中心になります。

炎症を抑えるためのステロイド剤や気管支拡張剤を投与しながら、これ以上の感染を避けるためにフィラリア予防薬を月1回投与します。なかには自然治癒するネコもいる一方で、投薬をやめると、咳などの症状をぶり返すことが多いので、長期または生涯、投薬を続ける必要があることが多いとされます。

定期的な通院を行いフィラリアの寿命を待つ場合、月に1回の通院だとして1回あたり1万円~2万円程度。これに加えて、毎日飲ませなければならない数種類のお薬代(1万円~2万円程度)がかかります。

6.忘れずにフィラリア予防を!

フィラリアというとワンちゃんの病気だから、と安心している方もいるでしょうが、ネコちゃんにとっても全く油断できない恐ろしい病気です。

とはいえ、動物病院で処方される、ネコ専用のフィラリア予防薬を飲ませるだけで簡単に予防できる病気でもあります。猫用のフィラリア予防薬は、背中に滴下するスポイトタイプの予防薬で、自宅で簡単に塗布することが可能です。

ワンちゃんに比べると少ないとはいえ、約1割の猫はかかっているとされる確実に身近に存在する病気です。 そして、しっかりと予防をすれば心配のない病気でもあります。

飼い主さまはネコちゃんのためにもしっかりと責任をもって予防をしていく必要があります。


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