ワンちゃんのフィラリア症と予防薬の種類

5月に入ると、あるいは蚊と聞くと、ワンちゃんにフィラリアの薬を飲ませなければいけないことは知っている、という方も多いと思います。 ではフィラリアについて具体的にどんな病気かはご存じでしょうか。 ワンちゃんが健康にすごせるよう、フィラリアについてもう一度おさらいしてみましょう!
目次
- フィラリアとは?
- フィラリアってどうやって感染するの?
- 特に気をつけるべきシーズン
- 予防薬の種類
- もし感染してしまった場合の治療方法は?
- フィラリアがいなくなったら治るのか
- 忘れずにフィラリア予防をしよう!
1. フィラリアとは?
毎年4月に狂犬病予防注射が終わると、次に予防するものとしてフィラリアがあげられますよね。フィラリアとは犬糸状虫(いぬしじょうちゅう)という寄生虫の病気です。 寄生虫と聞くとおなかのなかに虫がいて下痢をしてしまう、といったイメージを持たれる方が多いですが、フィラリアは違います。
フィラリアは血管や心臓などに寄生する虫です。 犬糸状虫という名前からわかるように、白い糸のような虫で、そうめんのような形をしています。 この虫が心臓の中にたまってしまうのです。
フィラリアは主に肺の中の血管や心臓の中に寄生するため、フィラリアが成長するにつれて心臓に負担がかかり、食欲や元気がなくなったり、進行すると咳が出る、腹水が溜まるなど様々な症状が出て、最終的には死に至る恐ろしい病気です。

2. フィラリアってどうやって感染するの?
ワンちゃんが蚊にさされると、フィラリアに感染することがあります。フィラリアの生活様式は非常に複雑で、ワンちゃんと蚊の体の中をいったりきたりしながら成長していきます。 まずフィラリアに感染したワンちゃんが蚊にさされることで、蚊の中にフィラリアの幼虫が移動します。そして、フィラリアの幼虫を持った蚊が別のワンちゃんをさすことで、このワンちゃんもフィラリアの幼虫に感染します。 フィラリアの幼虫は血液にのって心臓にたどりつき、そうめんくらいの太さまで成長してフィラリアの幼虫を産みます。さらにこのワンちゃんを蚊がさして…というようなループでフィラリアは広まっていきます。
このような具合に、ワンちゃん同士の直接の接触では移りませんが、蚊が媒介することで多くのワンちゃんの身体の中にフィラリア幼虫が産み付けられてしまうのです。

3. 特に気をつけるべきシーズン
フィラリアは蚊を介して広がっていく寄生虫のため、もちろん蚊が出ているシーズンは要注意です。北海道では7月~9月ごろ、本州では4月~11月ごろ、沖縄では1年を通して予防が必要とされてきましたが、最近は暖冬や暖房設備の発達により1年を通じて予防を行う必要も出てきています。
実際に、フィラリア予防をせずにひと夏過ごしたときのフィラリア感染率は約4割、ふた夏すごしてしまうと9割というデータがあります。
このように、予防をしなければほとんどすべてのワンちゃんが掛かりうる病気ということです。
そのため、今お伝えしたシーズンはもちろん注意が必要ですが、これは目安程度にとどめて、実際の予防期間は飼い主さまがお住いの地域の獣医師の先生にご相談するのがよいでしょう。またフィラリアのお薬はフィラリアの成虫でなく幼虫を殺すお薬のため、予防は蚊がでなくなってから1か月後まで続けることが基本です。

4. 予防薬の種類
フィラリアの予防薬にはいろいろな形があります。 病院によっては複数の製品を取り扱っている場合もあり迷ってしまうかもしれません。愛犬の好みや体質などにあわせて獣医師の先生に相談してみましょう。錠剤
フィラリアの幼虫を駆除するシンプルな錠剤。フードやおやつといっしょにあげたり、喉の奥に押し込んで飲ませます。食物アレルギーの子や皮膚がデリケートな子でも安心です。チュアブル錠
口の中でかんでから飲み込むタイプで、薬がねりこまれたおやつのような製品。錠剤をのんでくれない子や、食べることが大好きな子に向いています。ほとんどのワンちゃんには問題ありませんが食物アレルギーがある場合は注意が必要ですので、獣医師の先生に事前にご相談ください。スポットタイプ
駆虫成分が入った液体を首の後ろにたらして使用するタイプ。錠剤やおやつを食べない子や食物アレルギーがあるワンちゃんでも安心です。 吐き出すことがないので確実に投薬できるのが大きなメリット。お薬をたらして一定時間がたてばシャンプーも可能です。注射
皮下注射でも予防が可能です。 効果は12か月間得られるものもあるので1回の注射で通年予防することができます。 お薬の飲み忘れのリスクを減らして確実に予防できるのがメリットですが、注射をするタイミングの体重でお薬の量が決まるため、成長期のワンちゃんには向きません。5. もし感染してしまった場合の治療方法は?
まずは血液検査をしてフィラリアが本当にワンちゃんの体のなかにいるのかを確認します。 あわせてエコーなどを使ってフィラリアにどれくらいの数感染しているのかを調べることになるでしょう。感染しているフィラリアの数がそれほど多くなければ、成虫に効くお薬を飲ませることで、内科的に治療を行うことが可能です。また、成虫用の薬でなく幼虫用の薬を飲ませ続けることによって、成虫が寿命で力尽きるのを待つという方法もあります。ただし感染しているフィラリアの数が多い場合には、外科的にフィラリアを取り出す必要があります。

6. フィラリアがいなくなったら治るのか
フィラリアを完全に除去できたからと言って100%なんの障害もなく健康になるかどうかはわかりません。フィラリアの数が多かった場合などでは心臓に障害が残り、一生涯心臓の治療をつづける必要がある場合もあります。7. 忘れずにフィラリア予防をしよう!
フィラリアはかつてワンちゃんが亡くなる原因の上位の病気でした。それは、数十年前は外飼いのワンちゃんが多かったことや、まだ予防の知識が広まっていなかったことが原因と考えられています。
近年は室内飼いのワンちゃんが増えてきたこと、飼い主さまや獣医師の先生が予防を頑張ってくださったことによって、フィラリアの発症数自体が抑えられてきているのです。
とはいえ、フィラリアは減ってはきているものの現在も確実に存在する病気です。 そして、しっかりと予防をすれば心配のない病気でもあります。
飼い主さまは愛犬のためにも、しっかりと責任をもって予防をしていく必要があります。